百合漫画として評価されている本作ですが、設定はかなり暗いです。
こういうのが僕は大好きです。妄想を掻き立てられると言いますか。
そこで3巻まで読んだ時点での感想と考察をネタバレ全開でしていきます。
「兄の嫁と暮らしています」ってどんな作品
主人公の志乃と兄嫁の希の2人っきりの同棲模様を描く物語。
一見してほのぼの設定ですが、兄(大志)の死が物語の雰囲気を一変させています。
大部分は仲睦まじい姉妹の物語ですが、お互いが依存しあう危うさも見え隠れしているわけで。
ちょっと異質な百合漫画ってのが僕の評価です。
ゴールは希の心の闇が消えること
やはり希と志乃が別居をして各々の道を歩む、というラストが一番分かりやすいですね。
で、そこから逆算すると希の心の闇が必ず立ち塞がってくると思います。
最初は志乃の方が弱いかなと思っていましたが、読み進めていくと希の方がかなり弱いですね。ヤバイレベルで。
志乃と希それぞれの葛藤から物語の真相を探っていきましょう。
希の幸せとは何かを考える志乃は前を向いている
志乃は本音では希は新たな人生を歩むべきだと考えています。
だからこそ、様々なシーンで思い悩んでいるわけです。
- また1人に戻っていいんですよって言わなければいけない(1巻)
- 夏祭で希が大志以外の男性と歩くのを目撃して狼狽する(2巻)
希さんの人生を歩んで欲しい。でも、1人は嫌だ。
志乃はそんな卑怯な自分に失望して落ち込むことも多々あります。
でも、そんな時は必ずクラスメートの翔太郎とみなとがフォローをしてくれます。
志乃は良い友人に恵まれていますね。バッティングセンターでは不覚にも泣きました。
未来をしっかりと見据えているし、フォローする友人もいる。
という理由で志乃はそこまで心配していません。
希の願いは志乃と本当の姉妹になること。現実を見れていない
一方で希の願いは歪です。
作中の至る所で分かりますが、志乃の姉になる事に執着しているんですよ。
- 律子が志乃の頭を掴むシーンにはっとする(2巻)
- 志乃の浴衣姿に喜ぶ理由を聞かれた時の理由(2巻)
この2つが分かりやすいですが、他にも姉に執着するシーンはあります。
では、なぜ姉に執着するのか。その理由は単純明快です。
本当の姉妹にならないと大志との繋がりが完全に消えてしまうと思っているからです。
志乃もですが、希はより深く大志への想いに縛られています。
希の生きる糧は大志との繋がりです。そして、そのためには志乃との繋がりが重要になってくるのです。
3巻で「志乃ちゃんと一緒だと笑ってしまう思い出ばっかり」ともありますし、志乃がいるからこそギリギリの所で精神を保っているのでしょう。
悪い言い方をすれば、大志との繋がりを残すために志乃を利用しているとも取れます。
それに感づいているからこそ希の母親は同棲に大反対したのでしょうね。
希の問題は考えが未来に向いていないことにあります。
常に大志との思い出を探し、そのために動いていく。
そんな考えでは、いつか必ずガタがきます。なので、本当ならば誰かが止めなければいけないのです。
しかし、元来ガンコな性格であり、また、大志を失った悲しみも計り知れません。
だからこそ、希の想いを理解している律子でさえも傍観者になるしかないのでしょう。
ただ、諸星先生だけは希の考えに対して指摘をしていますね。
残念ながら効果なしのようですが、後々キーマンとして活躍しそうな気配があります。
物語のカギを握るのは小泉梨奈!?
希の教え子である小泉梨奈の両親は作中で離婚をしています。
そんな複雑な家庭環境にある小泉梨奈との関りで希の心は揺さぶられるわけです。
子どもは無邪気と言いますか、ドストレートに心を抉ってくるんですよ。
志乃さんはお兄さんが1人と言っていました。先生の妹と言うのは嘘だったのですか?(3巻Diary27ラストの自由記載欄より抜粋)
荒療治ではありますが、希の目を未来に向けさせるには小泉梨奈の存在は欠かせないものになってくるでしょう。
ただの百合漫画では終わらない名作です
百合漫画は好きではないのですが、本作は考えさせられる部分が多く何度も何度も読み返しました。
登場人物のさりげない動きに意味があり、読み返すと成程なと感心してしまいます。
先の気になる展開でコミックス派の身としては落ち着かない日々が続きそうですね。